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■ 構造と工事監理が大切な理由
悪循環スパイラルの存在。
構造が大切だというあたりまえの話
みなさんは構造というとほとんどの方が業者まかせや設計者まかせだと思います。
ここでは、構造の大切さをデザインの大切さと同時にお話したいと思います。
みなさんは照明やコンセントの位置や仕上など大変興味もあるし、それは表面に見えますから、誰でも気が付くものですね。でも、こと、構造となるととたんに業者任せになりませんか?
でも、仕方ありませんよね。大変、難しいですから・・・。
業者や設計者に任せておけば大丈夫。そうお考えになるのは自然な考えです。

でも、でもですよ。現実として構造に詳しい施工業者や設計者は大変少ないといえます。

設計は意匠(デザイン)・構造・設備とあります。みなさんが直接お会いする建築士は意匠設計者です。通常、意匠設計者は構造や設備はやりません。と言うよりできません。(木造など小規模なものはほとんどは意匠設計が構造と設備も設計しますが・・・・・。)
マンション現場での工事監理中の荻原。現場に搬入されたコンクリートの打設前に第三者機関が検査した内容を監理者としてコンクリートの強度等の設計配合計画を確認後、温度、塩分濃度、スランプ、空気量、フローを確認しているところ。ここで第三者が見ないのは生コンクリートミキサー車(アジテーター)のプラント工場発車時間と到着時間の差を確認し、所定の時間内かを確認することである。他の現場の例としてフローがNG(No good)とコンクリート温度が低すぎてNGで2度打設中止し帰たり、打設所定時間が所定の時間をオーバーして返すことはよくあること。(ここまでチェックする監理者は少ない。)また、スランプがNGで返したこともある。第三者機関は検査するが、判断はしない。OKかNGかの判断は工事監理者や現場監督がするもの、だから工事監理者としての第三者判断は重要なのです。当社、現場監督もビックリの独自のチェックシステムを作成しているので、監理は厳しいのである。。

 構造は構造専門の建築士に依頼し、設備は設備専門の建築士(設備の場合は建築士とは限らない)外注するのが通常です。(大規模設計事務所は構造、設備の専門家を所員としています。)ここで問題なのは構造は命の問題が絡んでいるということです。構造計算や構造図作成設計業務をしたことのない意匠の建築士は専門的な意味での構造(一般の方に説明する程度の構造の知識はあるでしょう。しかし、私達プロ同士では素人同然と断言してもよいです。)については、詳しくはないので外注の構造専門家の構造家に依頼します。
しかし、ここが現実的な話なのですが、一般の方のほとんどが残念ながら設計監理料という費用の認識が低く、構造などの重要性に認識の低い建築主は(低いというのは構造は黙っていてもちゃんとやると単純に信じている方の意味)、設計事務所に依頼する場合に、金額を聞かされて驚く方もおります。そのようなソフトに対する社会構造なので、それを受ける側は本来ではまともにできない設計監理料で受託した場合次のようなことをする可能性が高いのです。
1)その設計監理料に見合う仕事として業務を調整してしまう場合。
2)設計監理料を施工者に肩代わりさせて建築主からは安いと思わせる設計監理料で契約し、足らない分は施工業者に見積りに計上させてしまう場合。

2)の場合はそもそも建築主背任行為だと思うのですが、平気でこれをする事務所も多いのは残念なことです。結局、建築主が正規の設計監理料を払っていながら、業者との癒着になりますから、ちゃんとした監理など出来るはずがありません。

1)については料金に見合う仕事しかしない。という単純な割りきりをされることになります。
しかし、これとて、ちゃんとした設計監理をすると依頼者は信じていますから、それを説明すべきなのに説明責任を果たさないという結果になるます。例えば、依頼された建物の構造設計を外注の構造設計事務所に頼む場合、確認申請に構造が合格するような最小限の図面や構造計算書作成を依頼します。実施設計図は確認申請図とは図面の意味が明らかに違うのですが、これで実施設計図として済ませることも多く、また、低額な設計監理料に見合うことから外注費を削るために、本来自分では監理できる能力のない構造の監理を構造設計事務所に依頼しないことも多いと考えられます。
依頼している場合でも、工事監理を構造設計事務所に依頼しても基礎の配筋検査時と上棟時の2回程度でしょう。
これでは構造の安全性を監理できるとは私には到底思えないのです。また、構造設計事務所もこのような現実の中で現場に出る工事監理経験が少なくなるという悪循環が存在します。そして、現場経験が反映されない机上の構造設計となりやすく、緊張感や現実感の欠落した設計に陥りやすくなるという悪循環スパイラルに陥らないとも限りません。

 妙な状態になっている現象があります。
構造のわからない建築設計事務所は構造の監理を行きたがらなくなります。
それは、そうですよね。
現場に出かけて監督なり職人さんに質問されても即答などできないのですから・・・。
また、わからないで現場を見ても問題のある場所が認識できないのですから、後で、そこが瑕疵として現れたら、認識がなくてもプロなのですから、現場にそれを指摘しなければ『黙認』したと理解されますから、行きたくないわけです。『黙認』したという責任が出てくるからです。
工事監理者として基礎配筋検査中の荻原。鉄筋1本1本鉄筋の直径、間隔、配筋方法を確認する。この現場では1/3程、不合格とし、やり直しを命じた。まあ、よくある事だが、構造設計の経験者だからできる技である。
そこで建築設計事務所は構造の時は無意識にも現場に行きたがらなくなるのです。
そうです、現場にいかないほど責任は回避できるのです。そして、構造が終わって仕上になると勢いよく現場に出入りして「あれこれ・・」いう建築設計事務所が多いことか・・。このことは一般の方も認識することが大切です。

これは全くおかしいことです。デザインも大切ですが、極端な言い方をすれば、仕上の傷やコンセントの位置、照明器具などは建築主でも最終的に発見できるものです。しかし、構造は現象が出ない限りはわかりません。現象が通常の使用時にでるとは限りません。しかし、構造の監理がしっかりなされなければ地震時に建物が倒壊する可能性は高いといえます。
プロという人は施主の見えないところを変わってしっかり監理することだと思います。何故、こんなことを書くかといいますと、実は私は意匠設計者でありながら構造設計もやってきたからです。実は構造は自ら進んで行ったのではなく、昔、業務上の関係から上司に構造設計をするように命じられました。その時は意匠設計しか頭にない私にとって構造設計をすることに苦悩することになりました。

 でも、ちょうどその時期に山本学治先生の素材と造形の歴史という本に出会いました。歴史と風土の中の構造美学という構造架溝の建築史に興味を持ち出した頃ですので、構造の業務にも前向きに取り組むことができました。しかし、私が学んだ知識など子供じみた知識であることを思い知らされました。その時の衝撃は良く覚えています。理解していると思っている構造。それはいとも容易く壊れ去りました。全くといって良いほど納まりがわからないのです。どの専門書を見てもそれは詳細には掲載されていませんでした。それからというもの構造の架構、構造力学、構造図面作成に夢中になりました。

配筋検査で鉄筋の結束が甘いので、結束し直していることを確認しているところ。鉄筋の結束が甘いとコンクリート打設で鉄筋が動き、鉄筋間隔が狂うということを教育指導し、全面的に見直すように指示した。これも、残念だが、よくあること。
そんな時期を経験しているので、自分が設計した建物の工事構造監理が楽しくなりました。そして構造が楽しい・美しいものだと知ってしまったことから現場の構造を見るのが好きで何回も足を運んでしまいます。定例会議や検査時の立会いはあたり前で、それ以外でも近くまで着たからと現場に弁解をいいつつ、配筋や鉄骨、構造を見るのが楽しくて仕方ない自分になりました。

そんな中いろいろなことに気付いたのです。現場監督から「こんなに構造の段階で現場にくる設計者を初めて見ました。」「こんなに来る人は始めてなので、これが本当の工事監理なんだと理解しました。」なんて言われたりするようになり、また、そういう監督さんの構造に対する認識や知識が考えていた以上に低いことに気付かされました。それは一般の建築設計事務所がちゃんとした構造監理をしていないことの裏づけであり、来ても現場監督にお任せで、ほとんど監督に指摘されない状態(指摘できない)があるためでもある。ということが理解できるようになりました。ここにも工事監理の悪循環スパイラルが存在します。
わたしはデザインは重要な要素であると考えていますが、それは構造が成り立った上での話しであり、その程度のことも現実はなされていないのではないかと疑問に思っています。

構造的知識が設計者にあるか否か?構造の監理能力が設計者にあるか否か?は施主さんには見抜くことは不可能だと思います。一般の方に説明できる程度の知識くらいは持ち歩いているからです。それが逆に構造監理、構造設計の構造悪循環スパイラルを作っているのではないかと痛感しております。

配筋状況を確認中。現場監督には現場自主チェックリストを必ず書式を示して提出させる。こちらから指示しないと出さないか、ラフなものしか出ない。必ず鉄筋本数、直径、間隔、仕様を確認させる。そのリストを確認した後、再度、当方で検査するのだ。それでも、直しがあるのは、リスト以外のことが多い。それは配筋をどのように組むのかという方法の問題なのだ。鉄筋職人は経験から学習しているので、構造の本質まで理解している人はほとんどいない。(現場監督は鉄筋職人より知らない)だから、工事監理はここが胆なのだ。ここでも私は監督にも鉄筋職人にも構造設計の意味から、何故、ここをやり直さなければならないかを教育観点から指導する。できる職人なら次は同じ間違いは起こさない。ダメな職人は同じ事を繰り返す。工事監理者(この場合は荻原)がしっかり監理することで、品質のバラツキを無くすことができる。指摘された監督の中には素直に「勉強になります。」と礼を述べる者もいる。こんな監督は成長し、いい所長になるだろう。

左の人物が工事監理者の荻原。右は現場監督。奥が鉄筋職人責任者。私が持っているのは検査がスムーズに進むように事前に用意した当社独自の検査用書類である。ノウハウがびっしりである。
よく理解していただきたいのですが、構造設計の経験のある設計者でないと現場の構造工事監理は難しいと思います。そして、現場監督も実は構造の知識はあるものではありません。職人さんがそれをカバーしていると言っていいでしょう。その職人さんのレベルが低い現場ですと、これはもう悲劇となります。
しかし、わたしのように構造設計経験のある意匠設計者は建築設計事務所全体の数%に満たないでしょう。ならば、それ以外の建築設計事務所に依頼する場合はどうしたらいいでしょうか?構造設計事務所とよりよいパートナーシップを保っている設計事務所ならば安心できると思います。これは意匠建築設計事務所が構造設計事務所に構造設計監理料を適切に支払う能力があることが大切ですし、これを払えない建築設計事務所(適切な業務ができない設計監理料で請負った事務所)は、下請け的な業務(監理能力がなくなります)しかできない構造設計事務所に依頼するしかなくなるのです。ここにも適切な設計監理料を支払わない場合に起きる、悪循環スパイラルが存在します。


これから建築と建てようと考えている方は構造が何よりも大切であるという認識をお持ちください。また、みなさんが考えられているよりも構造設計や工事監理が重要であるということをご理解頂ければ、きっと安心した街並みができ、悪循環を持つこの建築業界にも一光が差し、きっと未来が見えてくると思います。

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